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存在しない参考文献を見抜く:ChatGPTのハルシネーションを投稿前に確認する方法

ChatGPTなどが挙げた参考文献が実在するか、投稿前に確かめる手順。DOIの照会、CiNii Research・J-STAGE・NDLサーチでの確認、無料チェックツールの限界、arXivや学会の対応を解説します。

目次
  1. ハルシネーションによる参考文献とは
  2. どのくらい起きているのか
  3. arXiv、学会、ジャーナルはどう対応しているか
  4. 手作業で確認する方法
  5. 日本語の文献とJaLCのDOIを確認するには
  6. 無料で使えるチェックツール
  7. チェックツールで分からないこと
  8. AIと一緒に書いたときの確認
  9. 投稿前のチェックリスト
  10. Papexの参考文献の照会
  11. 出典

ハルシネーション(幻覚)による参考文献とは、存在しない文献を指している項目や、本物と架空の情報が混ざって1つの実在の文献を特定できなくなった項目のことです。実在するタイトルに架空の著者が付いている、本物のDOIが別の論文に付いている、存在しない学会誌名が書かれている、といった形をとります。ChatGPTなどの生成AIが挙げた参考文献には、こうした「存在しない文献」が混ざることがあります。

投稿前に確かめるには、すべての識別子を、それを発行した登録先で引きます。DOIはdoi.org、arXivのIDはarXiv、PMIDはPubMed、ISBNは図書館の目録です。そしてタイトル、筆頭著者、年、掲載誌が登録内容と合っているかを比べます。識別子がない文献は、正確なタイトルで検索します。日本語の文献なら、CiNii Research、J-STAGE、国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)が使えます。最後に、各文献を実際に開き、引用した主張を本当に支えているかを確認します。これは登録先の照会では分かりません。

2026年には、この確認の重みが増しました。arXivのコンピュータサイエンス部門の責任者は、ハルシネーションによる参考文献など、LLMの出力を確認しなかった「確定的な証拠」がある論文に1年間の投稿禁止を科すと告知しました。ICLRはそうした論文を査読前に不採択とし、ACLは採択済みの100本以上の論文を再投稿の手続きに戻しました。

この記事の方針、数字、ツールは、2026年10月19日に各情報源のページ、論文、リポジトリで確認したものです(保存版などを使った場合は出典に記載)。日本のデータベースとDOIに関する部分は、2026年10月31日に確認しました。この分野の方針やツールはすぐに変わるので、細部に頼る前にリンク先を確認してください。

ハルシネーションによる参考文献とは#

参考文献のハルシネーションとは、その項目の「同一性」が崩れている状態です。一致する文献が存在しないか、書かれた情報が別の文献を指しています。Samar Ansariは、NeurIPS 2025の論文で見つかった100件の架空の引用を分類し、5つの型にまとめました(arXiv 2602.05930)。

  • 完全な捏造:著者、タイトル、掲載先、識別子(DOI、arXiv ID、URL)がすべて架空
  • 属性の部分的な破損:本物と架空が混ざる。実在の著者に書いていない論文が帰属されている、実在の論文タイトルに架空の著者が付いている、掲載先は正しいが年が違う、など
  • 識別子の乗っ取り:有効なDOI、arXiv ID、URLが実在の論文を指しているが、著者やタイトルなどがその識別子の論文と一致しない
  • プレースホルダーの残骸:「Firstname Lastname」や「arXiv:2305.XXXX」のような埋め草
  • 意味的なハルシネーション:分野にそれらしく合うが、実在のどの文献にも対応しないタイトル

Ansariのサンプルでは、完全な捏造が主な型として最も多く(66%)、100件すべてが複数の型を同時に示していました。GPTZeroがまとめたNeurIPS 2025の例を見ると、印刷された姿が分かります。採択論文の1本は、実在のタイトルを「John Doe and Jane Smith」という著者名で引用し、GPTZeroの注記によれば「arXiv IDは別の論文につながる」ものでした。別の論文には「Firstname Lastname and Others」とあり、「URL or arXiv ID to be updated.」と書かれていました。

学会も同じあたりに線を引いています。ICML 2026は、エリアチェアにICLR 2026の基準に従うよう指示しました(エリアチェア向け指示)。示されたタイトルに「近いタイトルの文書や出版物がどこにも見つからない」場合、著者リストに「その出版物の著者でない人が加えられている」場合、掲載先が存在する「証拠がない」場合に、ハルシネーションとみなします。一方で、タイトルの小さな違い、数人の著者名の綴り違いや欠落、別の論文と著者リストが入れ替わっている(「よくあるBibTeXの誤り」)、実在するが違う掲載先、といった誤りは、修正は必要でもハルシネーションには当たらないとしています。

この定義の外にも問題があります。正しく記載された実在の論文が、それを引用した文を支えていない場合です。Discover Artificial Intelligence 誌の出版社は2026年10月3日、2024年のレビュー論文を撤回しました。理由は「この論文の参考文献のいくつかは文脈上不正確とみられ、原稿の執筆に生成AIが使われたことを示唆する可能性がある」というものです(撤回告知)。告知には、著者2人のうち1人が「この撤回に同意していない」とも記されています。こうした誤りは登録先の照会では見つかりません。文献を読むしかありません。

どのくらい起きているのか#

参考文献1件あたりで見ればまれですが、分野によっては論文1本あたりでもう珍しくありません。どの数字も、問題をどう定義したかによって変わります。主な数字と、その定義です。

  • NeurIPS 2025:GPTZeroは「採択された5290本のうち4841本」を調べ、それぞれ「人間の専門家が確認した」100件のハルシネーションの引用を公表しました(GPTZero、2026年1月21日)。記事は該当論文数を序文で51本、表題で53本としており、Ansariの論文は53本(「採択論文全体の約1%」)としています。NeurIPSの理事会はFortuneの取材に「論文の1.1%にLLMの使用による誤った参考文献が1件以上あるとしても、論文の内容そのものが必ずしも無効になるわけではない」と答えました(Fortune)。
  • ICLR 2026の投稿論文:GPTZeroは審査中の300本を抽出して調べ、ツールが90本を検出し、「人による確認の結果、50本に実際のハルシネーションの引用が少なくとも1件あった」としています(GPTZero、2025年12月)。
  • 4つの学会、複数年:Mark Russinovich、Ram Shankar Siva Kumar、Ahmed SalemのPhantom Referencesは、ICLR、ICML、NeurIPS、USENIX Securityの採択論文48,095本、参考文献2,614,992件を調べました。数えたのは「存在しない文献と、著者リストの大きな不一致」だけで、掲載先、年、出版状況のずれは除いています。参考文献単位の割合は「たいてい1%未満」でしたが、「2025年には、NeurIPSとUSENIX Securityの論文のおよそ20本に1本が、私たちの厳しい定義でハルシネーションとみられる学術論文風の参考文献を少なくとも2件含む」としています。「受賞論文の中にさえ」その疑いのある引用が見つかりました。
  • プレプリントサーバー:Zhenyue Zhaoらは「arXiv、bioRxiv、SSRN、PubMed Centralの250万本の論文に含まれる1億1100万件の参考文献」を調べ、「2025年だけで146,932件のハルシネーションによる引用」という控えめな推計を示しています(arXiv 2605.07723)。
  • 生物医学:コロンビア大学のMaxim Topazらによる調査は、2026年5月7日に The Lancet に掲載され、PubMed Centralのオープンアクセス論文の検証済み参考文献9710万件の中に、2,810本の論文にわたる4,046件の偽の引用を見つけました(Columbia Nursing)。Retraction Watchによれば、その割合は2026年最初の7週間で約277本に1本で、2025年の458本に1本、2023年の2,828本に1本から増えています。
  • ChatGPT自身が作る偽の文献:WaltersとWilderの2023年の研究は、ChatGPTに短い文献レビューを書かせ、「GPT-3.5の引用の55%、GPT-4の引用の18%が捏造」だったと報告しています(Scientific Reports)。どちらのモデルも今は使われていないので、この研究が示すのは失敗の起こり方で、今の割合ではありません。

これらの数字は互いに比べられません。対象、定義、確認の方法が違い、確定ではなく「疑い」の件数を数えたものもあります。The Lancet の調査には方法への批判もあり、CochraneのElla FlemyngはRetraction Watchに「方法についてかなりの詳細が欠けている」と述べています。

arXiv、学会、ジャーナルはどう対応しているか#

arXivのコンピュータサイエンス部門の責任者は1年間の投稿禁止を告知し、ICLRとACLは論文を不採択にし、ジャーナルは論文を撤回しています。以下の規則は、各会場のページ(arXivについては部門責任者の告知)から引用したものです。

会場規則措置出典と日付
arXiv「著者がLLMの生成結果を確認しなかった確定的な証拠」。例として「ハルシネーションによる参考文献」「arXivへの1年間の投稿禁止。その後の投稿は、まず信頼できる査読付きの会場で採択されていることが必要」Xのスレッド、2026年5月14日
ICLR 2026ハルシネーションによる参考文献は「論文の著者による倫理規定違反」「ハルシネーションによる参考文献が確認された論文はすべて査読前に不採択」。異議申し立ての窓口あり声明、2025年11月19日。振り返り、2026年3月31日
ICLR 2027「LLMが生み出した重大な虚偽、盗用、または事実の歪曲」は倫理規定違反「査読前の不採択につながりうる」著者向けAI方針、日付なし
ICML 2026エリアチェアは、「ハルシネーションによる参考文献が少なくとも2件」(または1件と他のAIの粗雑な出力の証拠)ある論文をプログラムチェアに報告ページに記載なしエリアチェア向け指示、日付なし
NeurIPS 2026ハルシネーションによる引用は「NeurIPSの行動規範」に違反。著者は「すべての文章、図、参考文献」に責任を負うハンドブックに記載なしメイントラック・ハンドブック、日付なし
ACL 2026存在しない参考文献は「ACLの出版倫理方針への明白な違反」採択済みの100本以上を最終版の段階で不採択。修正後は「通常の再投稿の手続きを経なければならない」プログラムチェアの声明、2026年5月

arXivの措置は、当時arXivのコンピュータ部門の責任者だったThomas Dietterichが告知しました(Times Higher Education)。スレッドでは「投稿にLLMの生成結果を著者が確認しなかった確定的な証拠があるなら、その論文のどこも信頼できない」と書き、例として「ハルシネーションによる参考文献、LLMのメタコメント」を挙げています。arXivのモデレーションのページは、2026年10月19日時点で、生成AIが生んだ「誤った参考文献」は「著者の責任」という原則を示していますが、措置そのものは書いていません。

ジャーナルの規則は投稿規程にあります。JAMAの投稿規程は「AI、LLM、チャットボットを参考文献の生成や整形に使ってはならない」とし、代わりに一般的な文献管理ソフトを勧め、「すべての参考文献の完全性、正確性、信頼性を確認する」よう求めています(JAMA)。Taylor & Francisの広報担当者はRetraction Watchに、問題のある参考文献がある論文は著者に差し戻し、「それが引用のごく一部を超えるか、原稿全体の信頼性に大きく影響する場合、投稿は通常不採択になる」と述べました。Springer Natureの Journal of Academic Ethics は2026年1月2日付の告知で、「この論文の参考文献の大半は存在しないとみられる」として論文を撤回しました(撤回告知)。その1か月前、責任著者はRetraction Watchに、共著者とともに「ChatGPTを使って参考文献を作った」と話していました。

手作業で確認する方法#

識別子は発行元の登録先で引き、4つの項目を比べ、識別子がないものはタイトルで検索し、最後に文献を読みます。以下はすべて無料でできます。

  1. 最終版のリストで確認する:最後の書式調整が終わってから行います。Phantom Referencesの著者が、ハルシネーションとみられる参考文献が5件以上ある論文の著者に連絡したところ、何人かは参考文献が「LLMベースのツールで生成または再整形された」と答え、中には「最初の投稿ではなく最終版(camera-ready)の段階で」そうなったという例もありました。
  2. DOI:各DOIをdoi.orgで引きます。解決しない場合は、DOI財団の「Which RA?」サービスで、どの登録機関が持っているかを確認できます。https://doi.org/doiRA/ の後にDOIを付けると、「DOI does not exist」(存在しない)を含む答えが返ります(DOI Foundation)。解決できた(リンク先が開いた)場合は、タイトル、筆頭著者、年、掲載誌をリンク先と比べます。DOIが別の論文を開くなら、それは識別子の乗っ取りで、見逃してよい誤植ではありません。
  3. arXivのID:arxiv.org/abs/ の後にIDを付けて開き、「arXiv:0706.0001v2」のように、引用した版を確認します(arXiv)。arXivの論文には https://doi.org/10.48550/arXiv.2202.01037 の形のDataCite DOIもあります(arXiv DOI help)。出版後に著者が掲載誌の情報やDOIを追加できるので(arXiv)、要旨のページに出版版が表示されることもあります。
  4. PMIDとISBN:PMIDはPubMedで引きます。本は、Open Libraryが https://openlibrary.org/isbn/9780140328721 の形のアドレスで解決できます(Open Library)。日本語の本は、NDLサーチや、CiNii Researchの「大学図書館の本をさがす」でも確認できます。
  5. まとめて引く:Zoteroの識別子による追加は、「ISBN、DOI、PubMed ID、arXiv ID、ADS Bibcode」を受け付け、ISBNは米国議会図書館やWorldCatなど、DOIはCrossrefなどの登録先、PubMed IDはNCBI PubMed、arXiv IDはarXiv.orgからメタデータを取ってきます。作られた項目を自分の記載と比べます。CrossrefのSimple Text Queryは、貼り付けた参考文献リストをCrossrefのDOIと照合し、「1回の投稿で1,000件まで」扱えます(Crossref)。そのヒントはどのツールにも当てはまります。「参考文献の正確さを確かめるには、参考文献と一緒に返されたリンクをクリックすること」。
  6. 識別子がない:正確なタイトルで、Crossref Metadata Search、DataCite Commons、計算機科学ならDBLP、OpenAlex、Semantic Scholar、Google Scholar、ACL Anthologyを検索します。日本語の文献なら、CiNii Research、J-STAGE、NDLサーチも検索します。学会の基準と同じく、引用したタイトルに「近い」ものがあれば確認の手がかり、近いものが何もなければ強い警告です。見つかったら、著者リストと掲載先も確かめます。
  7. ウェブページ、ソフトウェア、報告書:アドレスをWayback Machineに入れて保存版を見ます。保存版のアドレスには日時が「yyyymmddhhmmss」の形で入っているので、自分が読んだ日に合う保存版を引用できます。保存されていないページでも、存在しなかったとは限りません。
  8. 文献を開く:自分の文を支える箇所を探します。この手順で、登録先の照会では見つからない「文脈上不正確」な参考文献を見つけられます。

プレプリントと出版版の違いにも注意してください。どちらの版を読んだかを決め、年、掲載先、識別子をその版にそろえます。Phantom Referencesは、掲載先、年、出版状況の違いを「通常の書誌情報のずれ」としてハルシネーションに含めず、ICMLの基準も間違った掲載先を修正するよう求めていますが、自動チェックツールはこの不一致を警告することがあります。

日本語の文献とJaLCのDOIを確認するには#

日本語の論文や国内の紀要は、海外のデータベースやチェックツールでは見つからないことがよくあります。日本の文献には、日本のデータベースを使ってください(いずれも2026年10月31日確認)。

  • CiNii Research:国立情報学研究所(NII)の学術情報の検索サービスです。検索画面にはDOIの欄があり、データソースとしてJaLC、IRDB(機関リポジトリ)、Crossref、DataCite、NDLサーチ、KAKENなどが並んでいます。
  • J-STAGE:科学技術振興機構(JST)が運営する、日本の学術ジャーナルを発信するプラットフォームです。掲載誌と巻号が分かれば、論文のページで書誌情報を直接比べられます。
  • NDLサーチ:国立国会図書館の資料や全国の図書館の所蔵資料を検索できます。日本語の本や報告書の確認に向いています。
  • ジャパンリンクセンター(JaLC):JaLC自身の説明では「日本で唯一のDOI(デジタルオブジェクト識別子)登録機関」です。J-STAGEの論文や大学の機関リポジトリの資料の多くに、JaLCのDOIが付いています。

JaLCのDOIもdoi.orgで解決できます。たとえば、JaLCについての論文「ジャパンリンクセンターによるリンク管理と日本語の電子的学術コンテンツへのDOI付与」(『情報管理』55巻1号、2012年)のDOI 10.1241/johokanri.55.42 を https://doi.org/doiRA/10.1241/johokanri.55.42 で引くと、登録機関として「JaLC」が返ります。

注意したいのは、CrossrefやDataCiteだけに問い合わせるツールです。JaLCのDOIのうち、Crossrefにもメタデータがあるものは見つかりますが、そうでないもの(大学の機関リポジトリの資料など)は、有効なDOIでも「見つからない」と報告されることがあります。「見つからない」と出たら、まずdoi.orgで解決するか、「Which RA?」でどの登録機関のDOIかを確かめてください。

AIが日本語の文献を挙げた場合も、同じ手順で確かめます。上で紹介した「属性の部分的な破損」(実在の著者に書いていない論文が帰属されているなど)は、日本語の文献でも同じように確認が必要です。また、日本語の論文のタイトルを英訳して引用すると、チェックツールが見つけられないことがあります。ICLRのチェックツールでも、英語に訳されたタイトルの非英語論文が警告されていました(後述)。迷ったら原題で検索し直してください。

無料で使えるチェックツール#

いくつかのオープンソースのツールが、参考文献を取り出して学術データベースで照会します。どれも結果は確認すべき「警告」で、判定ではありません。2026年10月19日に開けたものを挙げます。

ツール照会先入力費用とライセンス制限と注記
CheckIfExistCrossref、Semantic Scholar、OpenAlex、DBLP、arXiv参考文献1件、BibTeX、テキスト、PDF、DOCX無料のウェブアプリ。MITライセンス制限の記載なし。下の比較を参照
RefCheckerSemantic Scholar、OpenAlex、Crossref、DBLP、ACL Anthology、LLMによるウェブ検索arXiv ID、PDF、LaTeX、BibTeX、テキストMIT。詳細なチェックにはOpenAI、ChatGPT、Anthropic、Google、Azureのアカウントが必要詳細なチェックは「ハルシネーション検出に対応したLLMプロバイダー」でのみ動作
HallucinatorCrossref、arXiv、DBLP、Semantic Scholar、ACL Anthology、Europe PMC、PubMed、OpenAlexなどPDF無料。AGPLライセンス「このツールが示すのは疑いであって、証拠ではない」
HalluCiteCheckerACL Anthology、arXiv、DBLPのローカルコピーPDF無料。Apache 2.0「完全にオフライン」で動作。既定ではこの3つの情報源が対象
HalRefSemantic Scholar、Crossref、DBLP、OpenAlexACL形式のPDF、または.bibファイル無料。リポジトリにライセンスの記載なし「acl.styを使う論文向けに設計」
CiteScanarXiv、Crossref、DBLP、Semantic Scholar、OpenAlex、Google ScholarBibTeX「オープンソースで無料」と自称2026年10月19日にはホスト版のデモが実行時エラー。コードはローカルで実行可能

このほかに、無料ですぐ使えるとは言えないものが2つあります。CiteAuditはarXiv 2602.23452の研究用パイプラインで、「URLの確認、Google検索、Google Scholar、LLMによる判定」を組み合わせ、実行には「Google AI Studio(Gemini)、OpenAI、SerpApiのアカウントが必要」です。GPTZeroのHallucination Detectorは無料登録のある商用サービスで、確認時には料金ページでプランの制限を読めませんでした。GPTZeroは、このツールが「オンラインで見つからない引用」を警告すること、そして「警告された引用が自動的にハルシネーションだというわけではない」ことを説明しています。

GESISのFidan BadalovaとPhilipp Mayrによる独立した比較が、それぞれの得失を示しています(arXiv 2607.22693、2026年7月)。彼らは5つのツールを、「3つの学術文書から取った104件の参考文献を人手で確認したテストセット(うち問題のある参考文献33件)」で試しました。

ツール見つけた問題(33件中)誤って警告した実在の文献(71件中)
RefChecker3236
CheckIfExist3134
Hallucinator2928
HalRef2453
HalluCiteChecker1820

著者によれば、RefCheckerとCheckIfExistは「問題のある参考文献をより多く見つけたが、誤検出も多かった」一方、HalluCiteCheckerは「誤検出が少ないが、見逃しが多かった」。弱点の原因として「参考文献の抽出の誤り、不完全なメタデータ、データベースの収録範囲の限界、照会結果の不一致」を挙げ、「これらのツールの出力を最終判断として扱うべきではない」と結論しています。テストセットは小さく、いくつかのツールはその後更新されているので、この表は順位ではなく得失の目安として読んでください。

チェックツールで分からないこと#

チェックツールには、文献が自分の文を支えているかは分かりません。警告された文献が本当に架空かどうかも、確実には分かりません。上の論文やツールで繰り返し指摘されている限界は5つです。

  • 存在することは、支えていることではない:Phantom Referencesは、自分たちの指標が「周囲の文章がLLMで生成されたかどうか、引用された結果が正しいかどうかについては何も主張しない」としています。Mohammad HosseiniはRetraction Watchに、「より大きく重要な問題」は、完全な架空ではないが不正確、偏り、不完全なAI生成の引用だと述べています。Discover Artificial Intelligence の撤回も、実在する文献についてのものでした。
  • 「見つからない」は「架空」ではない:HallucinatorのREADMEは、「技術報告、書籍、ワークショップ論文、新しい研究、英語以外の会場、ソフトウェアやウェブサイトは、しばしば収録されていないか、メタデータが不完全」と注意しています。ICLR自身のチェックツールも、「著者が英語に訳した、英語以外のタイトルの論文への参照」を警告してしまうものでした。Springer Natureの研究公正部門のディレクターChris GrafはRetraction Watchに、参考文献には「DOIが含まれないことが多く、ハルシネーションを見つける単純なツールは誤検出を出しうる」と述べています。日本語の論文や国内の紀要は、まさにこの「英語以外の会場」に当たります。
  • 他の登録機関のDOI:DOIの登録機関はCrossrefとDataCiteだけではありません。DOI財団は、Airiti、Chinese DOI、CNKI、ジャパンリンクセンター(JaLC)、Korean DOI Center、mEDRA、EU出版局なども挙げています(DOI Foundation)。CrossrefかDataCiteにしか問い合わせないツールは、これらの機関の有効なDOIを「見つからない」と報告することがあります。こうしたDOIは、DOIの仕組み全体を扱うdoi.orgで解決し、「Which RA?」で登録機関を確認してください。
  • 「見つかった」は「正しい」ではない:同じタイトルの文献が2つあることもあります。Phantom Referencesは、SIGIR-AP 2023に「同一タイトルの別々のチュートリアルが2つ」あり、ツールが違うほうに一致させた例を挙げています。乗っ取られたDOIやarXiv IDも実在の論文にきちんと解決するので、リンクの確認だけでは通ってしまいます。
  • AI文章の判定ツールは別物:BadalovaとMayrは、一般的なAI文章の判定ツールは「参考文献が存在するか、メタデータが正しいかを確認しないので、ハルシネーションによる引用の評価には向かない」と指摘しています。

AIと一緒に書いたときの確認#

AIに記憶から参考文献を挙げさせないでください。自分で選んだ文献を渡すか、登録先に問い合わせるツールを使わせ、AIが触れた参考文献は、書式を整えただけのものも含めて、すべて自分で確認します。

書式の整形は、誤りが入り込む経路の1つです。NeurIPSの理事会は「著者がLLMに引用の部分的な説明を与え、BibTeX(整形された参考文献)を作らせた可能性がある」と述べ、Phantom Referencesが連絡した著者も同様の説明をしました。JAMAの規則はその理由を示しています。こうしたツールは「引用された参考文献の正確さと信頼性に問題を起こしうる」ので、一般的な文献管理ソフトを使うよう勧めているのです。

チャットAIに自分の答えを確かめさせても、確認にはなりません。WaltersとWilderは先行研究を振り返り、ChatGPTは「この引用は正しいか」「引用を捏造しているか」と聞かれると「しばしば誤った回答をする」と書いています。AIアプリがツールを通じて照会する場合、ツールの答えは登録先から来ますが、その答えをアプリがまとめた内容は、やはりアプリのものです。チェックツールの中にはAIアプリに直接つなげるものもあり、CheckIfExistのREADMEは、「Model Context Protocol(MCP)を通じて、Claude DesktopやVS Code CopilotなどのAIアシスタントの中で」使う方法を説明しています。

そして、AIがしたことを開示します。ICLR 2027は「関連文献の特定」や「参考文献の整形」へのAI使用を開示するよう勧め、arXivは「テキスト生成AI」の重要な使用を報告するよう求めています。記載の文例は論文・レポートで生成AIの使用を明記する方法にあります。ACL 2026のプログラムチェアは原則をこう書いています。これらのモデルが文献レビューにもたらす効率は「投稿前に、引用したすべての文献の存在と関連性を手作業で確認する著者の義務をなくすものではない」。

投稿前のチェックリスト#

  1. 最後の書式調整やBibTeXの処理が終わった後に参考文献リストを固定し、その版を確認する。
  2. すべてのDOIをdoi.orgで解決する。解決しないものは、架空と判断する前に https://doi.org/doiRA/ で確認する。
  3. arXiv ID、PMID、ISBNは、それぞれの登録先で開く。
  4. 各文献のタイトル、筆頭著者、年、掲載先を登録内容と比べ、違う項目はすべて直す。
  5. 識別子のない文献は正確なタイトルで検索し、見つかったものの著者リストを確かめる。日本語の文献はCiNii Research、J-STAGE、NDLサーチでも検索する。
  6. 無料のチェックツールを1つ補助的に使い、警告はすべて自分で確かめる。CrossrefとDataCiteにない日本のDOIが「見つからない」と出ることを前提にする。
  7. ウェブの情報源はWayback Machineで確認し、元のページが変わっていれば保存版を引用する。
  8. 各文献が、読んだ版(プレプリントか出版版か)を指しているか確かめる。
  9. 各文献を開き、自分の文を支える箇所を見つける。
  10. 文献探し、執筆、参考文献の整形にAIの助けを借りた場合は、開示文に書く。

Papexの参考文献の照会#

Papexで仮説(Hypothesis)、発見(Discovery)、論文(Publication)の下書きを確認するとき、References(参考文献)の欄には文献ごとに「Look up」(照会)ボタンがあります(アプリの画面は英語です)。これは識別子ごとの登録先に問い合わせます。DOIならCrossrefかDataCite、arXiv IDならarXiv、PMIDならPubMed、ISBNならOpen Libraryです。そして登録内容からタイトル、著者、掲載先、年を埋めます。どれも研究者が書き換えられます。

結果は「Found in Crossref · 18 Sep 2026」「Title differs: registered as “…”」「Not found in the registry」のような、日付付きの観察として表示されます。署名の前には「Check 1 reference: 1 not found. You can still sign.」のような警告が出ますが、署名を止めることはありません。公開された記録では、各文献の横に、署名の外側でPapexの最新の観察が表示され、「Papex looked these up; that says a source exists, not that it supports the record.」(Papexが照会した結果で、文献が存在することを示すが、記録の内容を支えることを示すものではない)と添えられます。

Papexに接続したAIアプリ(/docs/ai、英語)は、PapexのMCPツール papex_lookup_reference で同じ照会を実行できます。このツールは、渡されたタイトルを登録されたタイトルと比べ、ウェブのアドレスにインターネットアーカイブの保存版があるかも報告します。Papex自身がそのアドレスを取得することはありません。

この照会が確かめるのは、識別子が存在することと、何として登録されているかです。文献が主張を支えているかは確かめません。CrossrefとDataCite以外の登録機関のDOIは、現在「Not found」と表示されることがあります。ジャパンリンクセンター(JaLC)に登録された有効なDOIでも、Crossrefにメタデータがなければ見つからず、これは既知の制約です。日本の文献は、上で紹介した日本のデータベースでも確かめてください。照会は剽窃、AI文章、査読のチェックではないので、各文献を読む(チェックリストの9)のは研究者の仕事です。

出典#

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